

法事という用事がきっかけで、岐阜からレンタカーを借りて家族で少し寄り道することにしました。岩村の歴史を感じたあとは、日本三名泉の一つ、下呂温泉へ向かいます。観光地として有名な下呂温泉ですが、この旅で大切だったのは「何をするか」ではなく「何もしない時間をつくる」こと。温泉に浸かり、家族で食事をし、疲れたら部屋に戻る。年齢を重ねると、そんなシンプルな過ごし方こそが旅の本当の楽しみになってくるんだなと感じた、そんな2泊でした。
岩村の歴史を背に、下呂温泉へ向かう
岩村で歴史を感じた足を延ばす形で、次に向かったのが下呂温泉です。岩村城下町の趣ある路地を歩いたあと、レンタカーで下呂へ。飛騨川沿いに広がる温泉街に着いた時刻は夕方で、陽が西に傾きかけていました。温泉街に流れ込む硫黄の香りがかすかに漂い、旅館の暖簾が静かに揺れている。そういう光景を見ていると、「あ、今から温泉に入るんだな」という感覚がじわじわと体に沁み込んでくるんだよな。下呂温泉は昔から湯治場として知られ、江戸時代には「養老の湯」と称されていたと聞きます。いや、そんな格調高い話は別にして、とにかく温かいお湯が地面からふつふつと湧いている場所へやって来たのだということが、その時点で何となく嬉しかった。

法事の後だからこそ、何もしない時間
法事を終えて家族だけで過ごす時間というのは、意外と貴重なものです。法事では親戚と会い、いろいろと気を遣わなくてはならないこともあります。でも温泉に着いた途端、そういった緊張感がするりと抜けるんです。部屋に案内されて、窓から飛騨川を眺める。浴衣に着替えて、温泉に浸かる。そうしていると、気づかないうちに体の奥底にあった疲れがほぐれていく感覚がある。何もしなくていい。観光地を回ったり、珍しいものを食べたり、SNSに投稿する写真を撮ったり、そういう予定を立てなくても構わない。温泉に入る。家族と一緒に食事をする。少し温泉街を歩いてみる。疲れたら戻ってくる。2泊あるからこそ、そんなペースで過ごすことができます。

五月の温泉街を歩く心地よさ
温泉街を歩いてみると、足湯の前には観光客が数人いて、思い思いの格好で足を浸していました。川の音が心地よく響き、五月の風が頬をなぞる。気温もちょうどいい季節だったから、歩いていても疲れない。飛騨川の河床から湯気が立ち上るのが見える。季節と時間と天気が全部揃ったようなタイミングで、この場所に来ることができたのだと思います。旅館の食事も、特に豪華なものではありませんでしたが、地元の季節の食材を使ったもので、ゆっくり食べることができた。旅行というと、どこへ行った、何を見た、何を食べたという話になりがちです。もちろんそれも旅の楽しみですが、こういう何もしない時間そのものが、年を重ねると旅の本当の価値になってくるんだなと感じました。

家族で時を重ねることの大切さ
法事という用件から始まったこの旅で、改めて気づかされたことがあります。家族で一緒に時間を過ごすということの大切さです。岩村で歴史を学び、下呂温泉でゆっくり休む。特別に豪華な旅行ではありません。でも、こういう旅もいい。そう思える2泊だったのです。何もしない時間も、旅の一部。いや、むしろ旅の中では最も大切な部分かもしれません。飛騨川の流れを聞きながら、家族とゆっくり時を重ねる。年を重ねるごとに、そういう旅が好きになってきたのだと気づきました。

無理なく楽しむヒント
下呂温泉は季節を問わず楽しめますが、5月から6月は気候が良く、新緑も美しい時季です。無理にスケジュールを詰める必要はありません。温泉に入る時間、食事の時間、休む時間を存分に取りましょう。朝寝坊するのもいいですし、部屋でゆっくりするのも旅の一部。足湯は無料で楽しめるので、少し疲れたら温泉街の足湯で足を休めるのもおすすめです。体力に自信がなければ、旅館の部屋食を選ぶのもいいでしょう。飛騨川沿いの散策も無理のない範囲で。何もしない時間に価値を感じられる旅を心がけてください。

















