

夏の岐阜に一人で車を走らせた。下呂温泉に着いた晩、温泉街の小路を歩いて探し当てた居酒屋で、飛騨の地酒と地元の鶏ちゃんを頬張った。翌日はせせらぎ街道をのんびり走り、道の駅明宝でソフトクリームを舐めた。こうした何気ない時間の積み重ねが、旅というものなのだ。
下呂温泉で飛騨地酒と鶏ちゃんに酔う
下呂温泉の夜は思いのほか静かだった。湯けむりが立ち込める中をそっと歩くと、昭和の風情が残る小さな居酒屋が目に入った。小川屋という暖簾をくぐると、カウンター席に数人の客と、やや年配の主人が立っていた。まずは飛騨の地酒を注文した。グラスに注がれた地酒は、澄んだ琥珀色で、匂いを嗅いだだけで山国・飛騨の香りがした。一口含むと、ほのかな甘みと後引く辛味が舌の上で躍る。こういう夜こそが、下呂温泉一人飲みの本質なのだと思った。そして出てきたのが鶏ちゃん。鶏肉を味噌だれで炒めたもので、匂いがすさまじい。野菜も一緒にじゃっと焼かれており、熱々の状態でテーブルに置かれた。一口食べると、噛むたびに肉汁が口の中に広がる。飛騨地酒と鶏ちゃんの相性は最高である。カウンターから外を見ると、温泉街を歩く人影がぼんやりとライトアップされていた。これ以上何がいるだろう、とふと思った。 → 下呂温泉の宿泊はこちら

せせらぎ街道、山越えドライブの魔力
やや朝寝をしてしまい、温泉から上がったのは午前10時をまわった頃だった。下呂温泉を後にして、今度はせせらぎ街道に向かう。この道は郡上八幡へ向かう山越えのルートで、50代の一人ドライブにはもってこいだ。ゆるやかなカーブと、適度な勾配。窓から流れ込む風は涼しく、次第に山が深くなっていく。途中、渓流が見える展望スポットに立ち寄った。青い水が岩の間を縫ってかなり激しく流れており、その音が車を降りた瞬間、ごぅごぅという重低音で耳に飛び込んできた。暑い盛りの深い緑と冷たい水音。岐阜ドライブコースの醍醐味というべきか。

道の駅明宝のソフトクリーム
やがて道の駅明宝に着いた。ここは郡上へ向かう途中の小休憩地点だ。駅舎の奥には地元産の野菜や農産物が並んでいたが、目的はソフトクリーム。道の駅明宝のソフトクリームは、地元の牛乳を使っているらしく、濃厚な味わいが特徴だ。舌の上で少しずつ溶けていくその感触は、まるで雲をかじっているような錯覚に陥らせる。駅舎の前に立って、ぼうっとソフトクリームを舐めながら、さっき聞いた渓流の音がまだ耳に残っていることに気がついた。旅というのは、こうした細切れの記憶が積み重なったものなんだな、と思った。

無理なく楽しむヒント
50代の一人ドライブなら、無理な早発は禁物。朝風呂にゆっくり浸かってから出発するくらいの気持ちで。せせらぎ街道は夏場でも朝と夜は肌寒いことがあるので、薄手のジャケットを持っておくと重宝する。道の駅明宝は混雑する時間帯と空いている時間帯の差が大きいので、できれば午前11時前か午後3時以降の利用がおすすめ。そして何より、無理に観光地を詰め込まないこと。ドライブの道中で見つけた景色や音、匂いを丁寧に拾い上げることが、この年代の旅の醍醐味なのだ。
大人旅のひとこと



















