

郡上八幡から下呂温泉へと向かう旅の2泊目、小川屋という老舗旅館に身を預けた。飛騨牛会席の夕食、内風呂と露天風呂でじっくり温泉に浸かり、部屋からの眺めも心地よい。3日目は朝風呂に入ってから温泉街を散歩し、帰路についた。そうした何気ない時間の積み重ねが、これ以上ない癒しをもたらすのだ。 → 小川屋の宿泊予約はこちら
小川屋に着いて、温泉へ
小川屋に着いたのは午後3時過ぎ。玄関をくぐると、昔ながらの旅館の香りが鼻をくすぐる。木の匂い、畳の香り、そして奥深くから漂う温泉独特の硫黄の香気。チェックインの手続きを済ませ、案内されたのは2階の客室。窓を開けると、下呂温泉の町並みが眼下に広がっている。屋根の瓦がずらりと並び、その向こうに山が連なる風景。こんな景色を眺めながら過ごすのだ、と思うと、急に気が抜けていくのを感じた。さっそく温泉へ向かった。内風呂は白く濁った湯で、湯気がもうもうと立ち上っている。身体を沈めると、ほのかな温もりが全身を包み込む。露天風呂は小ぶりだが、浴槽に身を預けたまま星空を仰ぐことができる。時刻は夕方5時を回ったころだが、夏の日はまだ西の空に残光をとどめていた。

飛騨牛会席との出会い
小川屋の夕食は飛騨牛会席だった。食事処に通されると、すでに白い布が敷かれた卓上に、前菜からして並んでいる。飛騨牛の刺身、甘辛い味付けの小鉢、枝豆、卵焼き。そして次々と運ばれてくるのが、この日のメインである飛騨牛会席の各品。炭焼きの飛騨牛は、表面がほの黒くなって、中身はうっすらと赤い。一口食べると、脂の甘さと、肉の風味が舌の上で踊る。こんなものを食べていいのか、という少し罪悪感めいた思いさえ浮かぶ。味わい深い汁物、山菜の天ぷら、土瓶蒸しまであるのだから、下呂温泉の食事というのはなかなかのものだ。食べ終わった時刻は夜8時。腹も心も満たされたまま、再び温泉へ向かった。

朝風呂と温泉街の散歩
翌朝、目を覚ましたのは6時半だった。まだ早い時刻だが、朝風呂に浸かるなら今だ、と思い立った。浴場に向かうと、朝の日差しが小さな高窓から差し込んでいる。湯気の中に、薄い光の筋が浮かび上がっている。朝風呂は独り占め。静けさに満ちた浴槽に身を浸していると、今朝の世界は自分一人のためにあるのではないか、という微妙な妄想に捕まる。が、そんなことはない。ただ誰も来ていないだけなのだ。朝食を済ませてチェックアウトしたのは10時。その足で温泉街の散歩に出かけた。昔ながらの旅館や土産屋が並ぶ街角で、白い湯の花が舞う光景を眺めた。下呂温泉という土地が、いかに長く旅人を迎え入れ続けてきたかが、その一つ一つの古い建物から伝わってくる。

無理なく楽しむヒント
下呂温泉での滞在を無理なく楽しむなら、到着後すぐに温泉に浸かること。疲れた身体を湯で解きほぐすことで、その後の食事も、睡眠も、朝の散歩も、すべてが一段階上の体験になる。朝風呂は早めの時刻に。人が少ないうちに浸かると、温泉地の本来の表情を見ることができる。温泉街の散歩は、のれんや看板をじっくり眺める時間を持つこと。1軒の旅館に何十年も連なる時間の積層を感じながら歩くと、自分の時間の流れ方も変わってくる。
大人旅のひとこと





















