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【行ってみた!】函館元町・湯の川温泉③|温泉宿でご褒美 夫婦2泊3日
函館湾を望む湯の川温泉の割烹旅館若松の玄関と庭園

函館は、海と山に囲まれた港町である。そこへ、ちょっと贅沢な時間を求めて出かけたのである。湯の川温泉の割烹旅館若松での3日間。朝の光が心地よい温泉に浸かり、夜は季節の懐石に舌鼓を打ち、日中は元町の坂道を散策する。そんな、あたかも水が静かに流れるように静寂に包まれた旅。このコースなら、きっと誰もが「ああ、来てよかった」とため息をつくはずなのだ。

割烹旅館若松、湯の川温泉へ到着

割烹旅館若松に到着したのは、初夏の日差しが傾きかけた午後のことであった。玄関をくぐると、一本の廊下が奥へと伸びていて、その先に庭が見える。白い砂利が敷き詰められ、苔むした石が点在している。館内は、どこまでも静かだ。余計な音がない。スタッフは物静かに動き、声も控えめ。こうした静寂そのものが、実は最高のおもてなしなのだと、何度も訪れた温泉宿で学んだ気がする。今回、割烹旅館若松を選んだ理由は、そういう「落ち着き」を感じたからだ。湯の川温泉は函館の中心部から車で15分ほど。観光地としての賑やかさと、温泉地としての静寂のバランスが絶妙な場所である。夏の函館は、海風が爽やかで、湿度も程よい。部屋に案内されると、窓からは庭越しに函館湾が薄く見えた。浴衣に着替えて、さっそく温泉へ。

割烹旅館若松の露天風呂から眺める函館の夜景

温泉に身を委ねる時間

割烹旅館若松の温泉は、あたたかく、そしてどこか優しい。湯質は、肌当たりが柔らかく、長く浸かっていても芯から温まる感覚がある。浴室は木が多く使われていて、檜の香りが立ち上っている。大浴場の奥には露天風呂もあり、そこからは夜景が見える。夕刻に浸かると、刻々と色が変わる空が眼前に広がる。青紫から深い紺へ、そして黒へと変わっていく。その変化を眺めながら湯に身を任せるのは、もう言葉では言い表せない心地よさなのだ。温泉の効能については、科学的な説明は省くが、数日浸かっていると、体の芯の疲れが溶けていくような感覚がある。3日間のうち、朝と夜に2度ずつ浸かることができるので、トータルで4回も温泉を楽しむことになる。夏場でも、朝風呂は別格である。

元町の二十間坂に並ぶ明治時代の歴史的建造物

元町の坂道を歩く喜び

元町の坂を下りていくと、古い建物が並んでいる。その多くは明治から大正にかけて建てられたもので、石造りの倉庫や洋風の商館が、海へ向かって一直線に並んでいるのだ。二十間坂から函館山へ向かう道すがら、何気なく立ち止まって看板を読んでみたり、店の軒先に置かれた品物を眺めてみたり。こうした「何もしない散歩」が、実は最高の観光なのだと思う。割烹旅館若松での宿泊を基点にすれば、朝食後に出かけて、昼食は近辺で済ませ、午後3時頃には宿に戻るというリズムが自然である。坂道を歩くのは体力を消耗するが、帰宅後にもう一度温泉に浸かれば、足の疲れもすぐに消える。夏場なので、日中の日差しは容赦ないが、函館の海風のおかげで気温そのものは比較的穏やかだ。

懐石料理で使われた器と旬の食材

季節の懐石を味わう

割烹旅館若松の食事は、朝と夜、どちらも季節の素材を活かした懐石仕立てになっている。初日の夜は、地のホタテや旬の野菜を炭火で焼いたもの、地元の白身魚の刺身など。器も上質で、食べる前に目で楽しむ喜びがある。2日目の朝は、前夜の余韻を引きずったまま、小ぶりながら充実した朝食膳が運ばれてくる。地物の卵焼き、昆布の佃煮、ご飯がすすむ一汁三菜。食べながら窓の外を眺めると、朝日が庭の苔に反射しているのが見える。このような小さな喜びの積み重ねが、旅の質感を決めるのだと改めて感じるのだ。3日目の朝食を食べて、午前中にチェックアウト。空港へ向かう車の中で、あの温泉の感触と、懐石の味が、ふわりと思い出される。

朝日に照らされた割烹旅館若松の庭園の苔と石

無理なく楽しむヒント

函館への移動は飛行機がおすすめ。羽田空港からは2時間程度で到着する。湯の川温泉は駅からも近く、タクシーで5分ほど。初日は到着後、宿で休息に充てるのが吉。体が重いままでは、温泉の気持ちよさも半減してしまう。2日目は早めに起きて、朝風呂を浴びた後、元町散策に出かけるのがリズムとしては理想的。歩きやすい靴を用意し、日中の日差し対策として帽子やサングラスは必携である。また、坂道が多いため、足首に不安のある方は無理をしないこと。3日目は朝食後、ゆっくり荷物をまとめて、チェックアウト。空港行きのバスに乗る時間に余裕を持たせると、慌ただしさなく旅を締めくくれる。湯の川温泉の湯は、毎日浸かると睡眠の質が向上するという経験則もある。1泊では物足りない、と感じるかもしれない。そんな時は、季節を変えて再び訪れるのが大人の楽しみ方なのだ。

大人旅のひとこと

ひとときの旅とは、本来は日常からの逃げ出しではなく、生きるための栄養補給のようなものなのだろう。割烹旅館若松での三日間を過ごしていると、それが実感される。温泉に浸かり、季節の食事をいただき、古い町を歩く。こうした営みの一つひとつは、別に珍しいことではない。しかし、静かな場所で、焦ることなく時間を使うことの大切さは、歳を重ねるごとに体感できるようになるのだと思う。函館の夏は、それほど暑くない。海風が心地よく、光が優しい。人生の大事な時間を、こうした場所で誰かと共にすること。そのことが、後々の人生の支えになっていくのではないか。大人になってからの旅は、思い出作りというより、自分たちの生き方を問い直す時間なのかもしれない。

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